代理店は不要?インハウス100%を指示されても断った私の判断は正しかった

代理店とインハウス運用

代理店は不要?インハウス100%が正義?そういう話をよく見かけますし、実際に上司からそう指示されたこともあります。でも断りました。現場で出した答えは、どちらでもなかったからです。インハウスで成績が上でも代理店を手放さなかった理由と、その判断が正しかったと思える根拠を整理します。

この記事のポイント

インハウス100%にすると情報が閉じて、自社だけが不調なのか業界全体なのかわからなくなります。代理店の本当の価値は運用ではなく情報収集です。自社運用CPAに手数料20%を乗せて比較しながら配分を決め、少額でも自社で回す手を止めない。その設計が現場では正しかったです。

インハウス100%を勧める人が見落としていること

要点:インハウス100%にすると情報が閉じます。自社だけが不調なのか業界全体なのか、外から見えなくなるリスクがあります。

インハウス担当者がPCの前で悩んでいる

インハウス化のメリットはよく語られます。手数料がかからない、スピードが上がる、ノウハウが蓄積される。どれも正しいです。でも「インハウス100%にしましょう」という話には、見落とされがちな盲点があると思っています。

それは情報が閉じるリスクです。代理店は複数のクライアントを横断して見ているので、業界全体の動向・媒体のアップデート・他社の成功事例が自然に入ってきます。インハウスだけで動いていると、その情報源が断たれます。

一番困るのは、成果が落ちたときです。自社のCPAが悪化したとき、それが自社の問題なのか業界全体のトレンドなのかが判断できなくなります。インハウス100%だとその判断材料がなくなります。

数字が悪化したときに確認したいのはこの順番です。自社だけが悪化しているのか、配信系の事故はないか、自社のカテゴリ全体が落ちているのか、他の媒体も同じ動きをしているのか。この確認を代理店に投げられるかどうかで、対策のスピードがまったく変わります。自社だけで判断しようとすると、根拠のないままやみくもに改善施策を打って予算を溶かしやすくなります。

なお、自社アカウントと代理店アカウントのダブルアカウント運用はカニバリが心配されることがありますが、2アカウント程度であれば実務上ほぼ問題ありません。むしろ比較データが取れるメリットの方が大きいです。

観点 インハウス100% インハウス+代理店併用
業界情報 自社内だけ・閉じやすい 代理店経由で横断情報が入る
不調時の判断 自社問題か業界問題か見えない 業界全体の動向と比較できる
媒体の最新情報 自分で追い続ける必要がある 代理店から先回りで入ってくる
手数料コスト なし 代理店分の手数料が発生する

代理店の本当の価値は運用ではなく情報収集

要点:代理店はCPAで評価される構造なので、LTVまでは見てくれません。でも業界の横断情報を持っているのは代理店だけです。

代理店とインハウス担当者が打ち合わせ

代理店に何を期待するかで、評価がまったく変わります。運用成績で代理店を評価すると、インハウスが上になりやすいです。自社の商品を一番深く理解しているのは自社なので、当然といえば当然です。

ただ代理店には、インハウスには持てない情報があります。複数のクライアントを横断して見ているので、業界全体のCPMの動き・媒体のアルゴリズム変化・他社が試している施策の傾向が自然に集まってきます。自社のCPAが悪化したときも「他社も同じ状況ですよ」「今月は媒体全体でCPMが上がっています」という情報が代理店から入ってくる。インハウスだけではこの判断材料が得られません。この情報収集の価値を、手数料20%のコストと天秤にかけて判断するのが現場での考え方です。

代理店はCPAで評価される構造になっています。LTVや継続率まで追うインセンティブが構造的にないので、そこは自社で持つしかありません。でも「業界全体の動向を教えてくれる情報源」としての価値は本物です。代理店をどう使うかを間違えなければ、手数料を払い続ける理由はあると思っています。

代理店から得られる情報の例

媒体全体のCPM・CPA動向、競合他社が試している訴求の傾向、媒体のアップデート情報、同業界の成功・失敗事例、新しいフォーマットや機能のβテスト情報。これらはインハウスだけでは入ってきにくい情報です。

自社運用CPAに手数料20%を乗せて配分を決める

要点:比較するのは自社運用CPA+手数料20%と代理店CPA。少額でも必ず自社で回す手は止めない。素材を動かせるのはインハウスだけだからです。

代理店不要論

インハウスと代理店の配分を決めるときの判断軸はシンプルです。インハウスのCPAに手数料相当の20%を乗せた数字と、代理店のCPAを比較します。インハウスCPA×1.2が代理店CPAを下回っていればインハウスを主軸に置く。上回っていれば代理店を主軸にする。この数字で判断すると感情が入りにくくなります。

ただしどちらが主軸でも、少額でもいいので自社で回す手は止めないことが大切だと思っています。代理店に100%任せてしまうと、CPAが悪化したときの原因が見えなくなります。クリエイティブの問題なのか、ターゲットの問題なのか、LPの問題なのか、自分で回していないとわからないんです。

もうひとつ、素材の問題があります。クリエイティブは素材が悪いとどうにもなりません。インハウスが動いているから「写真を撮り直して代理店に共有する」ができます。代理店のみに任せていると、公式感丸出しの既存素材しか渡せなくなります。

実感として、UGCっぽい素材や動画が当たるケースが多いです。公式感のある綺麗な写真より、生活者目線のリアルな素材の方がCTRが上がりやすい。これはインハウスが素材を動かし続けているからこそ試せることで、代理店だけに任せているとなかなかここまで踏み込んだ素材が出てきません。素材の質がそのままCTRとCPAに直結するので、ここはインハウスが動き続けることが前提になります。

  • 判断軸はCPAの比較:インハウスCPA×1.2と代理店CPAを月次で比較する。下回ればインハウス80%・上回れば代理店80%
  • 少額でも自社で回す:ボトルネックが見えなくなるので手を止めない。20%でもいいので自社キャンペーンを維持する
  • 素材は自社が動かないと変わらない:写真撮り直し・新素材の用意はインハウスがいるからできる。代理店だけだと既存素材しか使えない
  • 代理店には情報収集を求める:運用成績よりも業界情報・媒体動向の共有を定例で求める

まとめ

要点:代理店不要論・インハウス100%論はどちらも極端です。現場での正解は数字で判断しながら両方を使い続けることでした。

まとめ
  • インハウス100%にすると情報が閉じます。自社だけが不調なのか業界全体なのかわからなくなるリスクがあります
  • 代理店の価値は運用ではなく業界の横断情報です。LTVは自社で追い、情報収集は代理店に求める役割分担が現実的です
  • インハウスCPA×1.2と代理店CPAを比較して配分を決める。少額でも自社で回す手を止めないことがボトルネックを見える状態に保つ前提になります

よくある質問

要点:代理店とインハウスの使い分けで現場からよく出る疑問に答えます。

Q. 代理店を完全にやめてインハウスに切り替えるべきタイミングはあるか?

インハウスCPA×1.2が代理店CPAを大きく下回り続けている場合は切り替えを検討できます。ただ情報収集の観点から完全にゼロにするのはリスクがあります。少額でもつながりを維持する方が現実的だと思っています。

Q. 代理店に情報収集を求めるにはどう伝えればいいか?

定例MTGのアジェンダに「業界動向・媒体アップデート情報の共有」を固定で入れるのがおすすめです。求めないと運用報告だけになりがちなので、最初から議題として設定しておくと動きやすくなります。

Q. 素材の用意がインハウスでできない場合はどうするか?

外部カメラマンや制作会社に発注する場合でも、ディレクションはインハウスが行うことが大切です。「どんな悩みを持つ人に向けて・どんなシーンで使う素材か」の設計はインハウスにしかできません。代理店に丸投げすると公式感丸出しの素材になりやすいです。