ミドルファネル設計とは何か 認知を選ばれる理由に変える方法

ミドルファネル設計

この記事のポイント

「認知施策は売上につながっているのか」「獲得施策だけで事業は伸びるのか」——この問いに認知か獲得かの二択で答えようとしている限り、焼畑は続きます。CDエナジーダイレクトが指名検索CV数を前年比215%に増やした事例から、ミドルファネル設計の本質を整理しました。

「知っているのに選ばれない」は、ミドルファネルが抜けているサイン

要点:認知はある。でも選ばれない。この状態はファネルの上下が機能しているのに、「知っている」を「選ぶ理由」に翻訳する工程が抜け落ちているからです。マテリアルデジタル取締役・川端康介氏はこの工程を「ミドルファネル」と呼び、焼畑式マーケティングから脱出する鍵として整理しています。

予算を積んでも勝率が上がらない。施策を変えても数字が変わらない。広告代理店に相談すると広告施策が、SEO会社に相談するとSEO施策が提案される——こういうループに入っているとき、問題は施策の質ではなく「施策同士がつながっていないこと」にある場合が多いです。

川端氏はこの状態を「焼畑式マーケティング」と呼びます。全体最適の視点がないまま、部分最適だけが積み上がっていく。ブランド資産も学習も蓄積されず、また次の”効きそうな施策”を探し続ける。健康食品・美容ECの現場でも、同じパターンは頻繁に見られます。

焼畑が生まれる構造的な原因は3つです。施策の役割と評価軸が一致していないこと(テレビ=長期・デジタル=短期という思い込み)。マーケティングとブランディングが別の営みとして切り離されていること。そして支援会社が自分たちの売りたいサービスに合わせて課題設定を寄せてしまうこと。

ミドルファネルとは何か。「利用意向」と「想起」を育てる設計

要点:ミドルファネルとは、認知から購買の間にある「想起・利用意向・買いやすさ」を設計する工程です。「名前を知っている」状態を「この場面ではここを選ぶ」という選択基準に翻訳することがミドルファネルの役割です。

社名認知を、選ばれる理由に翻訳すること

川端氏の整理によると、ミドルファネルの目的は「社名認知を、選ばれる理由に翻訳すること」です。

多くのブランドが抱える課題はここにあります。認知率は高い。でも「〇〇といえばこれ」という想起が弱い。あるいは想起はされるが「今の自分に関係ある」と思われていない。利用意向があっても「どこで買えるか・どう始めるか」がわからない——このそれぞれの段階に対して別の設計が必要です。

これはECの文脈で言い換えると「LP流入を増やす前に、なぜこの商品が今の自分に必要かを伝える工程があるか」という問いになります。認知広告→LP→購入という直線設計でCV率が低い場合、多くは「LP前」の設計が抜けています。

ファネルの段階 ユーザーの状態 必要な設計
認知 名前を知っている テレビ・SNS広告・PR
想起・利用意向(ミドル) この場面で思い出すか・選ぶ気があるか コンテンツ・ミドル広告・体験設計
買いやすさ(ミドル) どこで・どう買うかわかるか LP設計・指名検索対策・CRM
獲得 購入した リスティング・CVR最適化

CDエナジーダイレクトが「引越し」起点のミドルを設計した結果

要点:CDエナジーダイレクトは、電力会社の切り替えが最も起きやすい「引越しのタイミング」を起点にミドルファネルを設計しました。その結果、指名検索CV数が前年比215%に増加しました。

電力自由化で選択肢が増えた電力業界では、認知は高くても「なぜ今切り替えるのか」というきっかけが弱いと購買に至りません。CDエナジーダイレクトが注目したのは「引越し」というライフイベントです。引越し時は電力会社を変更する可能性が最も高まるタイミングです。

この文脈に絞ってミドルファネルを設計することで、「引越し×電力切り替え」という想起が生まれ、指名検索からのCVが大幅に増加しました。認知広告の量を増やしたのではなく、「どのタイミングで・どんな状況の人に・何を想起させるか」という設計を変えた結果です。

健康食品・美容ECに置き換えると「年齢変化を感じ始めたタイミング」「季節の変わり目」「職場環境が変わったとき」という文脈が、想起を生む設計の起点になります。認知だけ広げても想起が弱ければ指名検索は増えません。

まとめ

記事のまとめ

  • 焼畑式マーケティングが続く原因は、施策の役割と評価軸がずれていることと、認知から獲得の間の「翻訳工程」が抜け落ちていることにあります。この工程がミドルファネルです。
  • ミドルファネルの設計とは「名前を知っている」を「この場面ではここを選ぶ」に翻訳することです。想起・利用意向・買いやすさという3段階のそれぞれに設計が必要です。
  • CDエナジーダイレクトの事例は「引越しのタイミング」という文脈に絞って設計したことが指名検索CV数215%増の起点になりました。健康食品・美容ECでも「どのライフイベント・季節・気づきのタイミングで想起されるか」という設計視点がミドルファネルの出発点になります。

よくある質問

Q. ミドルファネルの施策はどう評価すればいいですか?

指名検索数の変化・ブランド認知率の変化・利用意向の変化が主な評価指標になります。ただし川端氏が指摘するように「施策の役割に合った評価軸を設定すること」が前提です。ミドルファネルの施策を獲得施策と同じ短期CVRで評価すると、正しい判断ができません。

Q. 健康食品ECでミドルファネルを設計する具体的な起点は?

「年齢変化を感じ始めた」「健康診断で引っかかった」「季節の変わり目に体調が変わった」というライフイベントや気づきのタイミングが有効な起点です。そのタイミングで自社商材が想起されるようにコンテンツ・広告・SNSを設計することがミドルファネルの具体的な設計作業になります。

※参照:「指名検索CV数215%に増加、『知っているのに選ばれない』を超えるミドルファネルの本質」MarkeZine(株式会社マテリアルデジタル・川端康介氏)