2025年、日本のインターネット広告費がついに4兆円を突破し、動画広告も初の1兆円超えとなりました。広告の主戦場が完全に動画へ移っているなかで、薬機法制約のある健康食品・美容ECはこの流れにどう向き合うべきか——現場目線で整理してみます。
ネット広告費4兆円突破——いま起きている地殻変動
要点:ネット広告費が初めて総広告費の半分を超え、なかでも動画広告が大きく伸びています。広告の主役が動画へ完全に移ったと言える局面に入っています。
2025年のインターネット広告費が初めて4兆円を超え、総広告費の過半数を占めたというニュースが業界で話題になっています。テレビや新聞などすべての媒体を含めた広告のうち、半分以上がネットに流れている計算です。デジタルシフトという言葉ではもう足りないくらい、主戦場が完全に移ったと言える数字だと思います。
そのなかでも特に注目すべきは、動画広告がついに1兆円を突破したことです。前年比は120%を超え、ネット広告のなかで最も高い成長率を記録しています。インストリーム広告とアウトストリーム広告がほぼ同水準で伸びており、SNSや動画プラットフォームの普及が背景にあります。
📊 2025年のネット広告市場で起きていること
| 領域 | 起きていること |
|---|---|
| ネット広告費全体 | 初めて4兆円超え 総広告費の過半数を占める |
| 動画広告 | 初の1兆円突破 前年比120%超の高成長 |
| ソーシャル広告 | 動画共有系の比率が増加 動画とソーシャルが連動 |
| 運用型広告の比率 | 構成比9割近くに到達 データで回す運用が主流 |
もうひとつ見逃せないのが、運用型広告の比率が約9割に達していることです。感覚や経験ではなく、データで最適化する世界が完全に定着したと言えます。とはいえ、データだけで勝てるかというとそうでもない、というのが現場での実感です。データの見方そのものが、運用者の判断軸として問われる時代になってきています。
健康食品・美容ECで動画シフトに向き合う難しさ
要点:動画広告は健康食品・美容ECにとって機会である一方、薬機法・景表法の制約から表現の難しさがあり、戦略的な設計が欠かせません。
動画広告がここまで伸びているなかで、健康食品・美容ECを運用している方なら、すぐに気づくはずです。「動画でこれをそのまま伝えたら、薬機法に引っかかるのでは?」という感覚です。テキスト広告では通る表現が、動画では映像と音声の組み合わせで意図しないニュアンスを生んでしまうことがあります。
特に注意したいのが3つの領域です。私が普段から意識しているのは、動画ならではの表現リスクを構造的に把握しておくこと。テキスト広告のチェック基準をそのまま動画に当てはめても、抜けが生じます。
静止画やテキストでは使わないような前後比較演出が、動画では自然に組み込まれてしまうことがあります。映像の連続性が「変化を保証している」ように見える効果を生むため、薬機法・景表法の観点から特に慎重さが求められます。
テキストの体験談は事実ベースで管理しやすい一方、動画の体験談は表情や声のトーンが「効果保証」として伝わってしまうリスクがあります。出演者の発言だけでなく、映像全体が伝える印象まで含めてチェックする視点が必要です。
成分の働きをCGや図解で表現する場面で、断定的な印象を生む演出が起きやすいのも動画特有の課題です。視覚的にわかりやすくすることと、効果を断定することは紙一重なので、設計段階から線引きの基準を持っておくことが大切です。
これらは制約として捉えると重く感じるかもしれません。ただ、制約があるからこそ独自の表現を磨く必要が生まれるとも言えます。健康食品・美容ECの動画広告は、表現の制約を逆手にとった「物語型」「世界観型」のクリエイティブと相性が良い領域だと感じています。
縦型動画とUGCの相性——薬機法の制約を強みに変える視点
要点:縦型動画とUGCを組み合わせる手法は、薬機法の制約があるからこそ効きやすい領域です。生活者の言葉を活かす設計が鍵になります。
動画広告のなかでも特に伸びているのが縦型動画です。SNSのフィードに自然に溶け込む形式で、「広告っぽさ」が薄くなるのが特徴。ユーザーがコンテンツを見る感覚のまま、広告を受け取れる形になっています。
この縦型動画と相性が良いのが、UGC(ユーザー投稿型コンテンツ)です。プロが作り込んだ広告映像よりも、生活者の日常のなかに自然に商品が登場する形のほうが、信頼感を生みやすい場面が増えています。健康食品・美容ECにとっては、薬機法表現を直接訴求できないからこそ、生活者の言葉を借りる手法が効く——これは制約を強みに変える発想だと思います。
📖 健康食品・美容ECの動画戦略で押さえたい視点
| アプローチ | 設計のポイント |
|---|---|
| 世界観型 | 商品を取り巻くライフスタイル 素材の産地・開発の物語 |
| UGC型 | 生活者の日常的な使用シーン 体験を語る範囲で慎重に設計 |
| 解説型 | 成分や使い方の事実情報 効果効能の断定は避ける |
| ブランドストーリー型 | 作り手・開発背景を伝える 誠実さで差別化を図る |
ただし、UGC型は「演出された自然さ」になりやすいのが落とし穴です。生活者の声を借りているように見せかけて、実際は意図的に作り込まれた広告——これは消費者の目が肥えている時代だからこそ、見抜かれやすくなっています。本物のUGCを集めて編集する設計と、UGC風の作り込みは分けて考える必要があります。
制約のある業界だからこそ、誠実さがそのまま競争優位になる——何事もバランスが重要、というのが現場でいつも感じるところです。
まとめ
要点:動画シフトはもう「やるかどうか」ではなく「どう向き合うか」のフェーズ。健康食品・美容ECは制約を活かす視点で設計を進めることが鍵になります。
- ネット広告費4兆円突破・動画広告1兆円突破——広告の主戦場は完全に動画へ移っており、運用型広告の比率も9割近くに達しています
- 健康食品・美容ECで動画広告に取り組むなら、ビフォーアフター演出・体験談演出・効果イメージ視覚化の3点に薬機法視点でのチェックが欠かせません
- 縦型動画とUGCの組み合わせは制約のある業界こそ効きやすい——演出された自然さに頼らず、本物の生活者の言葉を活かす設計が長期的な信頼につながります
よくある質問
要点:動画広告と健康食品・美容ECの運用について、現場でよく聞かれる疑問を整理しました。
市場全体が動画へシフトしているため、検討は早いほうが良いと思います。ただ、薬機法の表現リスクを構造的に把握してから設計に入るほうが、長期的なリスクを抑えられます。
商材や訴求軸によりますが、健康食品・美容ECでは生活者の自然な声を活かすUGC型が信頼を生みやすい場面が増えています。本物のUGCを集める仕組み作りが鍵です。
テキスト広告とは別に、動画専用のチェック観点(演出・声のトーン・映像の連続性など)を整備するのが有効です。法務部門との連携もテキスト以上に重要になってきます。
※参照:「動画広告ついに1兆円突破! ネット広告費が過去最高4兆円超えで、もう動画シフトは止められないぞ」アスキー
