ユナイテッドアローズの会員組織「UAクラブ」は、アクティブ会員数が160万人を超えながら、優良顧客の数と売上構成比も同時に伸ばしました。「会員を増やすほど質が下がる」という常識を破った設計から、ECが学べることを整理しました。
会員を増やすと優良顧客の比率が下がる。なぜユナイテッドアローズは逆を実現できたのか
要点:ユナイテッドアローズの「UAクラブ」は2026年3月期にアクティブ会員数が160万人を突破し、3年間で約25%増加しました。同じ期間に年間購入額10万円以上の優良顧客数は約60%増加し、会員売上に占める優良顧客の構成比も50%を超えました。
会員数を増やすと起きがちなことがあります。優良顧客の比率が薄まる——これはECのCRM設計で頻繁に経験するジレンマです。セールや割引で新規会員を獲得するほど、購買頻度が低い・単価が低い層が増えて、会員全体の質が下がっていく。
ユナイテッドアローズの事例はこの常識を破っています。アクティブ会員数を3年間で約33万人増やしながら、年間購入額10万円以上の優良顧客は約11万人増えました。会員の裾野を広げながら、ロイヤル顧客の絶対数も構成比も同時に伸ばすことに成功しています。
現場でCRM設計に携わっていると、この結果が「数字として出た」という驚きより「どういう構造でそれが可能だったか」のほうが気になります。
| 指標 | 2023年3月期末比 | EC担当者への示唆 |
|---|---|---|
| アクティブ会員数 | 約25%増(160万人超) | 裾野は広がっている |
| 優良顧客数(年間10万円以上) | 約60%増(約18万人) | 質も同時に上がっている |
| 会員売上に占める優良顧客比率 | 50.9%(4.3ポイント増) | 構成比まで改善している |
| 実店舗とEC併用の顧客数 | 約49%増(24.5万人) | クロス化が購買頻度を上げた |
カギは「クロスユーザー」の増加だった。オンラインとオフラインを使い分ける顧客がLTVを押し上げる
要点:実店舗とECを併用するクロスユーザー数は3年間で約49%増加しました。クロスユーザーの存在が会員維持率と購買頻度の向上につながったと見られます。会員の「接触チャネル数」がLTVに直結するという構造がデータで示されています。
CRM設計をしていると「購買頻度を上げるにはどうするか」という問いに向き合い続けます。メールを増やす・クーポンを配る・ポイント施策を強化する——これらは短期的には機能しますが、長期的には疲弊します。
ユナイテッドアローズの事例で注目したいのは「クロスユーザー数が約49%増えた」というデータです。実店舗でブランドを体験したユーザーがECで買う・ECで見つけた商品を店舗で試す——この行動ループが会員維持率と購買頻度を上げているという構造が見えてきます。
会員維持率が同4.6ポイント改善し、年2回以上購入する会員比率も伸長しているという結果は、「クロスユーザーの増加が購買回数を増やしている」という仮説を裏付けています。接触するチャネルが増えるほど、顧客のブランドへの関与が深まる——これはEC単体での顧客育成に限界を感じている担当者への示唆です。
「高付加価値商品の提案力」という土台がなければロイヤル化はできない
要点:ユナイテッドアローズはCRM施策だけでなく「UA CREATIVITY戦略」として高付加価値商品の提案力強化に取り組み、売上総利益率が2015年3月期以降で最高水準となりました。ロイヤル化の土台は「売る商品の質」にあるという事実が示されています。
ここが最も重要なポイントだと感じています。CRMがうまくいかない根本的な理由のひとつは「ロイヤル化できるほどの商品力がない」ことです。
ユナイテッドアローズが優良顧客を増やせた背景には、「中高価格帯市場における高付加価値商品の販売力」という自社の強みを再確認し、それを深掘りしたことがあります。売上総利益率の改善は、値引きで売るのではなく「価値を認めてくれる顧客に適正価格で売る」設計に移行していることを示しています。
健康食品・美容ECにとってここから読み取れるのは、「CRM施策の前に商品の価値を磨くことがロイヤル化の前提」という原則です。定期購入の維持率を上げたいなら、まず商品に継続する理由があるかを問うこと——この順番を間違えないことが重要です。
まとめ

- 「会員を増やすと質が下がる」という常識をユナイテッドアローズは破りました。カギは実店舗とECを併用するクロスユーザーの増加と、高付加価値商品の提案力強化の両立です。
- クロスユーザー数が約49%増えたことが、会員維持率と購買頻度の改善につながっています。ECと実店舗・リアルイベントという「接触チャネルの複数化」がLTVを上げる構造は、ECを主戦場にするブランドにとって参考になる設計です。
- ロイヤル化の土台は商品力です。CRM施策を強化する前に「継続する理由がある商品か」を問うこと——この原則はEC業種を問わず共通しています。
よくある質問
Q. 健康食品・美容ECでクロスユーザーを増やす施策とは何ですか?
ポップアップイベント・サンプリング・百貨店や薬局への出展など「リアルで体験できる接点」を作ることが出発点です。オンラインで認知してリアルで体験し、ECで定期購入する——この行動ループを意図的に設計することが、ユナイテッドアローズと同じ方向性の施策になります。
Q. 優良顧客の定義はどう設定すればいいですか?
ユナイテッドアローズは「年間購入額10万円以上」を優良顧客の基準にしています。自社の商材・価格帯・購買サイクルに合わせて「年間購入回数」「累計購入額」「定期継続月数」などで定義することが現実的です。まず自社データで上位20%の顧客の行動特性を分析することが出発点になります。
※参照:「優良顧客の会員数+会員売上構成を伸ばしたユナイテッドアローズの施策とは?」ネットショップ担当者フォーラム(ユナイテッドアローズIR資料)

