Googleが提案したのは、ROASを使わない広告運用ではありません。日々の広告成果を見るアトリビューション、広告が新たな成果を生んだか検証する増分効果、広告費・季節性・価格・販促などと事業成果の関係を分析するMMMを組み合わせる考え方です。
Googleが示す3つの広告計測とは
要点:アトリビューション・増分効果・MMMは、同じ広告を異なる角度と時間軸から評価する計測方法です。

Googleは2026年9月、広告戦略を判断するための「measurement stack」という考え方を紹介しました。
ここでいうMMMとは「マーケティング・ミックス・モデリング」の略です。広告費や売上などの時系列データを使い、媒体別の広告出稿に加えて、季節性・価格・販促といった要因が事業成果へどの程度影響したかを統計的に分析します。
Googleが組み合わせるよう提案しているのは、リアルタイムのアトリビューション、定期的な増分効果のテスト、MMMの3つです。
| 計測方法 | 見るもの | 主な判断 |
|---|---|---|
| アトリビューション | 発生したCVと広告接点 | 日々の配信調整 |
| 増分効果 | 広告によって新たに生まれた成果 | 広告施策を続ける価値 |
| MMM | 広告費や外部要因と事業成果 | 中長期の予算配分 |
どれか1つが正解なのではありません。広告について何を判断したいのかによって、必要な計測方法が変わります。
広告計測の数字が合わなくても、異常とは限らない
要点:3つの計測結果が食い違うのは、測定対象や期間、答えようとしている問いが異なるためです。

管理画面のROASは、日々の広告運用に欠かせません。一方で、その数字は計測期間やアトリビューションの条件に影響されます。
増分効果が答えるのは、「広告がなければ発生しなかった成果はどれだけか」という問いです。MMMは、複数の広告媒体や季節性、価格、販促などを含めて、事業全体への影響を中長期で見ます。
そのため、管理画面では高評価でも増分効果は小さい、反対に短期ROASは低くても中長期では事業に貢献している、という結果も起こり得ます。
数字が合わないときは、どの計測方法を正解にするかではなく、その数字で何を判断しようとしているのかを先に確認する必要があります。
D2Cでは新規顧客・継続率・LTV・粗利まで見る
要点:初回購入時点のROASだけでは、継続購入を含むD2C事業への貢献を十分に判断できません。
健康食品や化粧品など、継続購入が重要な商品では、広告の評価を初回売上だけで完結させると判断が偏ります。
確認したいのは、新規顧客を獲得できたか、その後も継続したか、最終的にLTVや粗利が残ったかです。
- 新規顧客の獲得数・獲得比率
- 初回購入後の離脱率・継続率
- 一定期間後の顧客LTV
- 値引きや原価を差し引いた粗利
獲得後の離脱が多くても、新規顧客の獲得自体を止められないケースがあります。
現場では広告をすぐ停止するのではなく、広告は新規獲得、CRMは獲得後の定着というように課題を切り分け、CRM施策のA/Bテストで離脱率の改善に取り組む判断もあります。
広告側の数字だけで完結させず、獲得後の課題をCRMへ渡せるかどうかが重要です。
高度な計測を始める前に、測れていないKPIを確認する
要点:いきなりMMMを導入するより、現在のROASが何を含み、何を測れていないかを整理することが先です。

すべてのD2C企業が、すぐに3つの計測方法を導入する必要はありません。データ量や運用体制によって、現実的な計測方法は異なります。
まずは、現在使っているROASの計測範囲を確認します。
- 新規顧客と既存顧客を分けているか
- 初回売上だけでなく継続売上を含めているか
- 売上ではなく粗利で評価できているか
- 広告データと受注・顧客データをつなげられるか
ここで不足しているKPIが分かれば、次に必要なのがCRMデータの連携なのか、増分テストなのか、MMMなのかを判断しやすくなります。
計測方法から選ぶのではなく、次の予算判断に足りない情報から逆算することが実務的です。
まとめ
要点:ROASを捨てるのではなく、ROASだけでは答えられない問いを別の計測で補うことが重要です。
- Googleは、アトリビューション・増分効果・MMMを組み合わせた広告計測を提案しています。
- 計測結果が異なるときは、数字の優劣ではなく、それぞれが答えている問いを確認します。
- D2Cでは、新規顧客・継続率・LTV・粗利まで含めて広告の貢献を判断します。
- 広告の獲得課題とCRMの定着課題を分け、必要に応じてA/Bテストで改善します。
よくある質問
要点:ROASの役割と、MMMを導入する前に必要な準備を整理します。
Q. ROASは広告評価に使わないほうがよいですか?
ROASは日々の配信調整に必要です。ただし、計測期間や顧客区分、利益、増分効果まですべてを表す数字ではありません。判断目的に応じて、ほかのKPIや計測方法で補います。
Q. D2C企業もすぐにMMMを導入すべきですか?
必須ではありません。まずは広告データと受注・顧客データをつなぎ、新規顧客、継続率、LTV、粗利を確認できる状態を整えることが先です。そのうえで、大きな予算配分を判断する必要があればMMMを検討します。
※参照:「Build a measurement stack you can rely on to steer your campaigns.」Google Ads & Commerce Blog
